草木萌動|そうもくめばえいずる|如月|弥生|2023年|七十二候

歳時記

草木萌動 そうもくめばえいずる




実感としても着実に春が近づいているこの頃ですが、月も変わり3月1日より七十二候は雨水の末候「草木萌動(そうもくめばえいずる)」となります。
福岡地方は19日に「春一番」が吹きましたが、一転して寒の戻りの寒い日に逆戻りです。
それでも3日は「ひな祭り」、上巳の節句です。
「ひな祭り」については、風物詩のカテゴリーに分離・加筆してアップしてありますのでご参照ください。



草木萌動(そうもくめばえいずる)



草木が萌え出す頃という意味ですが、木々の枝先を注意深く見ると固く閉じていた芽も少しづつ萌木色となってきているのを発見します。
この「萌える」という言葉の本来の意味は、現代の多くの人がイメージする意味とは少し違い、草木が芽吹くことを表すため、草木が芽吹き出してどんどん青々としてくる様を表しています。また物事が起こり始める、きざす・兆しという意味もあります



草木萌動 そうもくめばえいずる




冬の間に蓄えていた新しい命の息吹が外へ現れてきて、木の芽はほころび、地面からは草の芽が一斉に顔を出し、褐色、灰色、そして白色と無機質だった景色は、日々淡い色に塗り替えられていきます。この頃に草の芽が一斉に萌え出てくる様子を「草萌え」または「下萌え」と言います。



旧暦2月の和風月名では「如月(きさらぎ)」と呼ばれていますが、別に「木の芽月(このめづき)」とも言われています。そして木の芽時に降る雨は「木の芽雨」、吹く風は「木の芽風」と呼ばれます。
「木の芽雨」は「木の芽起こし」「木の芽萌やし」と呼ばれ、そしてこの頃の晴天のことは「木の芽晴れ」、更に天候の変化に応じて「木の芽冷え」という言葉もあり、日本人特有の感性に基づく季節感は心が和みます。
そして、3月は「弥生(やよい)」。弥生の「」という字には「いよいよ・ますます」という意味があり、草木がいよいよ生い茂る月となります。



萌木色・萌黄色・萌葱色



この時期、だんだんと春めき、暖かい日差しに誘われるかのように、地面や木々の枝々からもえぎ色の小さな命が一斉に芽吹き始めます。そんな春先の色として「もえぎ色」というのがあります。



この「もえぎ色」ですが、当てる漢字によって多少の色味が変わります。



萌木色



若木色




萌木色は新緑が萌え出るような草木の色「もえぎ色」の基本とも言ってよいような青みがかった緑いろです。



萌葱色



若葱色




伝統色としての「萌葱色(もえぎいろ)」は、萌え出る葱(ねぎ)の芽のような緑色のことで、緑と薄青の中間のような色です。歌舞伎の舞台に使われる「定式幕(じょうしきまく)」の色は、黒・柿・萌葱色の組合せで出来ています。



萌黄色



萌黄色




「萌葱色」同様、平安時代から使われている伝統色には、「萌黄色(もえぎいろ)」があり、こちらも春先に新緑が萌え出るような緑色という意味ですが、冴えた黄緑色です。
「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり」で有名な幸若舞「敦盛」の出で立ちとして「萌黄縅(もえぎおどし)」の鎧を着用していたようです。
また「萌黄色」は、若者向けの色として好まれ、あの弓の名手、那須与一も着用していて、若武者の象徴のように使われていたようです。



若芽色 若苗色 若草色



また、伝統色では、早春に生えだして間もない若い芽のような淡い黄緑色は「若芽色(わかめいろ)」とも呼ばれます。



若芽色




若苗色」や「若草色」よりも更に薄く淡く、綺麗な色合いです。







これからの時期、こんな「もえぎ色」を少し意識してみてはいかがでしょうか。



結詞



春めいたこの季節のグルメと言えば「ハマグリ」があげられます。
産卵期に入る前の2~4月は身が太くおいしいとされています。
貝の組み合わせが、対のものとしか合わないことから夫婦和合の象徴とされ、結婚式やひな祭りのテーブルを彩ります。



はまぐりのお吸い物




そのひな祭りも、もうすぐです。



啓蟄 けいちつ 蟄虫啓戸 すごもりのむしとをひらく




さて5日より二十四節気は「啓蟄(けいちつ)」そして七十二候はその初候「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」とまた一歩春に向かっていきます。

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