牡丹華|ぼたんはなさく|八十八夜|2023年|牡丹|芍薬|茶摘み

歳時記

牡丹華 ぼたんはなさく




長い間悩まされた新型コロナウィルス禍ですが、手放しでは喜べないものの昨年までとは幾分違う空気の中GW(ゴールデンウィーク)が始まります。暦は「牡丹華(ぼたんはなさく)」へと移ってきています。また5月2日は「八十八夜」となります。



なお、ゴールデンウィーク中の「昭和の日」「憲法記念日」「みどりの日」「端午の節句・こどもの日」については風物詩の記カテゴリーに別記事として公開してありますのでご一読いただければ幸いです。



牡丹華(ぼたんはなさく)



牡丹 ぼたん




4月30日より七十二候は穀雨の末候「牡丹華(ぼたんはなさく)」へと変わります。
あの「花の王」とも呼ばれる牡丹(春牡丹)が咲き出す頃となりました。



牡丹はボタン科ボタン属の落葉小低木で、寒牡丹冬牡丹春牡丹とありますが、七十二候の牡丹は「春牡丹」を指しています。
春牡丹は4月から5月に咲く一般種で、牡丹全体に言えることですが、従来は種子からしか栽培が出来ず高嶺の花でしたが、戦後、芍薬を用いて接ぎ木での栽培が考案され現在に至っています。



牡丹と芍薬(しゃくやく)



牡丹華 ぼたんはなさく
牡丹の花




立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉をご存じの方もたくさんおられると思いますが、美しい女性を表す言葉です。



さて牡丹は椿・山茶花と並んで見分けのつきにくい花ですが見分け方もちゃんとあります。



まずは牡丹も芍薬もボタン科ボタン属の植物なのですが牡丹は木の仲間芍薬は草の仲間です。そのため牡丹は枝から新芽を出し、芍薬は地中の根だけを残し土中から新芽が出てきます。ちなみに芍薬は、牡丹が「百花の王」と呼ばれるのに対し、「花の貴婦人」とも呼ばれているようです。



それではもう少し詳しく牡丹と芍薬の違いをお話しておきましょう。



芍薬 しゃくやく
芍薬の花




花の咲く時期



最近では様々に品種改良されたものも出回り牡丹も芍薬も同じ時期に咲くものも増えてきましたが、基本的には春牡丹は4月から5月にかけて開花し、芍薬は牡丹が満開になる5月から6月にかけて咲き、花期が前後に多少ずれています。
ただ先ほども書きましたが、牡丹には10月から2月に咲く寒牡丹や冬牡丹もありますが、いずれも変種であったり咲く時期を調整したものです。



葉とつぼみの違い



牡丹の葉は艶がなく、ギザギザとした切り込みが入っています。つぼみはその先端が尖っています
一方、芍薬はその葉は牡丹より少し厚みがあり細長く若干丸みを帯びています。そしてつぼみは丸く蜜が染み出していてベタベタしています。



散り方



これは椿や山茶花と同様に牡丹は一枚ずつ花びらを散らすのに対して芍薬は椿のように花ごとボトっと落として散っていきます。
満開を過ぎた花は時を惜しむようにその美しい形を留めることもない枯れ方をするので、その様を「崩れる」と表現することもあります。



葉牡丹




さて余談ではありますが、お正月飾りなどでよく目にする「葉牡丹」はその葉の形が牡丹の花に似ていることから名付けられたもので牡丹とは全くの別種のアブラナ科の植物でそのまま放置して置けば、菜の花と同じような花を咲かせます。



葉牡丹 花




ぼたん鍋



牡丹に因んだグルメと言えば何といっても「ぼたん鍋(猪鍋)」でしょう。



ぼたん鍋 しし鍋 イノシシ




何故「ぼたん鍋」というかの説明は後に回すとして、「しし鍋」からお話ししましょう。



もちろん「しし肉=獣の肉」なのですが、「しし」は「獅子」のことでライオンではなく中国伝来の霊獣を指しているものと思われます。
花の王様の牡丹と百獣の王「獅子」の組み合わせは「唐獅子牡丹」などと呼ばれ、とても縁起の良いものとされてきました。
その百獣の王「獅子」が唯一恐れるものが体内に潜む寄生虫獅子身中の虫の語源)で牡丹の夜露にあたると死ぬという伝承があり、夜のなると牡丹の木の下で休むと言われています。
そんな獅子とイノシシの関係ですが、イノシシの語源は「イ~ッと鳴く獣」つまり「い~のしし」からきているようです。食用としての歴史は古く縄文時代には食肉として飼育されていたことが分かっています。



さてどうしてイノシシ鍋を「ぼたん鍋」と言うようになったかは諸説ありますが、明治の文明開化以前は仏教の教えから獣肉を食べることが憚られていましたので、獣肉を使った鍋を様々な植物に関連付けていたことの一つではないかと私は考えています。
鹿肉を用いたものは「もみじ鍋」、馬肉を使ったものは「さくら鍋」、鶏肉が入ったものは「かしわ鍋」などいずれも植物と関連付け言い訳をしながら食べていたそうです。



八十八夜



話は換わりますが、月が変わり今年は5月2日雑節の一つ、立春から数えて88日目に当たるこの日は「八十八夜」です。
ちょうどこの時期は、農業に従事する人びとが多かった昔の日本社会では、ちょうどこの頃が種まきや田植えの準備、茶摘みなど春の農作業を行う時期にあたっていたからのようです。八十八夜の数日後には二十四節気でいう「立夏」になることもあり、昔の人はこの時期を「夏の準備を始める目安」と捉えていました。
また「末広がり」の姿をしていることから、幸運を呼ぶとされてきた「」の字ですが、その「八」の字が二つ重なった「八十八夜」は、それだけに縁起のいい日と考えられていたようです。さらには「八」「十」「八」の3つの字を組み合わせると「米」という字になるため、とくに農業に携わる人びとに大切にされてきたそうです。



八十八夜の忘れ霜



八十八夜の忘れ霜」または「八十八夜の泣き霜」とは、この時期の「寒の戻り」に伴い思いがけぬ霜が降りることを指していますが、作物の新芽に被害をもたらすことから農家の方々には大変恐れられています。
反面この霜は今シーズン最後の霜でもあり以降は霜も降りず農業には最適な好天が続くという意味で使われる「別れ霜」という言い方がされる場合もあります。



このような霜の被害に注意を促すために、「八十八夜」が利用されていたとも考えられています。



茶摘み



八十八夜 茶摘み




「夏も近づく八十八夜~♪」と歌い出される唱歌はお馴染みですね。



茶摘の歌詞



夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは
茶摘じゃないか
茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠



日和つづきの今日此の頃を、
心のどかに摘みつつ歌ふ
摘めよ 摘め摘め
摘まねばならぬ
摘まにや日本の茶にならぬ



新茶 お茶の新芽




この時期に摘まれた新茶を飲むと長生きできるという言い伝えもありお茶愛好家のみならずこの時期の新茶は珍重されています。
言い伝えのみならず、この時期の新茶はカテキンやカフェインが少なく苦みや渋みがすくなく、さらにうまみ成分が豊富なため香り、味が優れたお茶になります。



結詞



立夏 りっか




夏も近づく八十八夜、5月5日からは二十四節気はいよいよ「立夏」となり、今では「こどもの日」となった「端午の節句」です。
そして七十二候も「蛙始鳴 (かわずはじめてなく)」に移ります。



蛙始鳴 かわずはじめてなく




一日も早く暦のように「五月晴れ」の日が迎えられ花の王・牡丹が楽しむことができますように!!

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