麋角解|さわしかのつのおつる|ニホンジカ|ニホンカモシカ

麋角解 さわしかのつの おつる 歳時記

麋角解 さわしかのつのおつる




令和4年も残りあと一週間、公私ともにお忙しいことでしょう。
今年のクリスマスはどのようにお過ごしになられたでしょうか。
暦は27日より冬至の次候「麋角解(さわしかのつのおつる)」と移ります。



麋角解(さわしかのつのおつる)



この「麋角解」は何かと解釈の難しい七十二候ですが、一般的には、オス鹿の角が落ちる頃とされています。



オスの鹿は年に一度この時期に立派に伸びた角が根元からポロリと自然に落ちて春にはまた新しい角へと生え変わります。
ちなみにここでいう「」とは「なれしか」または「さわしか」というトナカイの一種で、実はトナカイの和名です。
日本書紀にも猿や猪とともに山野にたくさんいたという記載のある大鹿またはヘラジカのことだと言われています。



トナカイ




そのトナカイ、生息地が寒冷地であることから他のシカ類とは体の特徴などがだいぶ違います。
トナカイの蹄(ひづめ)は、地面を踏む面積が広くし、雪がたくさん積もっている道や、雪で湿ってぬかるんだ道を歩くため、他のシカ類に比べて大きく、平たくなっています。



そして、なぜ「オス」の角がというと、他のシカ類はオスだけに角が生えますが、トナカイの場合はオスにもメスにも角が生えます。さらにその角はオスとメスの角の生え変わる時期が違うのです。その時期はオスが秋~冬メスは春~夏と言われています。
それは角を何に使うかということに深くかかわっていて、オスの場合、秋の繁殖期までは繁殖相手を確保するために他のオスと戦ったり、エサを確保するために秋までが必要不可欠な時期であり、一方メスは冬季中に子育てを行うため、角を使って雪の下からエサを見つけたり、体格差のあるオスから攻撃されても応戦したりする時に活用するために冬こそ角が必要なのです。



ニホンジカ



ニホンジカは日本に分布する唯一のシカ科動物であり、大きな哺乳類の少ない日本ではニホンカモシカと並ぶ代表的な大型動物である。
日本国内に棲息するニホンジカはエゾシカホンシュウジカキュウシュウジカマゲシカヤクシカケラマジカツシマジカの7つの地域亜種に分類されています。その他に、千葉県に中国からの外来種であるキョンが、和歌山県友ガ島にはニホンジカの亜種であるタイワンジカが、再野生化しています。
伝統的な革製品である甲州印伝で使われている鹿の皮は、現在では中そのキョンの皮が使われています。



ニホンジカ




神の使いである神鹿(しんろく)として最も有名なのは奈良の春日大社・興福寺のシカですが、春日大社の縁起によると主祭神である武甕槌(タケミカヅチノオ)命が鹿嶋より春日大社のある三笠山に遷座した時に乗っていた白鹿が繁殖したものと伝えています。
江戸時代まで神鹿殺しは重罪で、犯人は死刑となりました。
現代においても春日大社周辺に生息する「シカ」は天然記念物として保護されているため条例等で刑罰の対象となっています。



さてそのニホンジカなのですが、生まれた年にはまだオスにも角はありません。
やがて成長して一歳になるころには小さな一本角が生えてくるのです。そして二歳になるとその一本角は二つに枝分かれし三歳で三つにそして四歳以上の成獣となると四つにまで枝分かれした立派な角と変わります。



鹿の角




その角は4月ごろから8月にかけて袋角(ふくろづの)と呼ばれる表面が柔らかい皮膚と短い毛で被われた角が生え、血管も通っていて触れると温かいそうですが、9月ごろになるとその外皮も血管も無くなり堅く立派な角に変貌してゆき、3月ごろにはその角も落ちてまた春に生え換わっていきます。



ニホンカモシカ



もうひとつ日本で鹿といえば、ニホンカモシカを思いだしますが、シカといってもウシ科の哺乳類でニホンジカとは全く違う種類の動物です。
このニホンカモシカも日本の特産種で特別天然記念物にも指定されています。
漢字で書くと「日本氈鹿(かもしか)」となり、「氈(かも)」は毛氈(もうせん)、つまり敷物のことです。ニホンカモシカの体毛は長く密に生えており、色は白から黒褐色までさまざま。つまり毛織物として最適だったので氈(かも)をつくる鹿だから「氈鹿」という名前がついたそうです。
京都府以東の本州、四国、九州にかけて分布し、ちなみに九州では大分県・熊本県・宮崎県に生息しています。



ニホンカモシカ




ところで余談にはなりますが、細く真っ直ぐな足のことを「カモシカのような足」といいますが、ニホンカモシカの足は日本の山岳地帯に適応した力強い足です。それを分かってしまうと「カモシカのような足ね」といわれた時に、はたして喜んでいいものやらと困ってしまう女性も多いのではないでしょうか。



結詞



今年も新型コロナウィルス第8波やインフルエンザなど防ぐ意味でも、静かに今年一年に思いを馳せ、一年に一度、惜しげもなく立派な角を落す鹿にあやかり、今年のことはしっかりと今年中に片を付けるように、もうひと頑張りして行きましょう。
年越しの過ごし方新年の迎え方はそれぞれ風物詩のカテゴリーに別記事にて公開してありますのでご参照ください。



雪の麦畑 雪下出麦 ゆきわりてむぎのびる




本日お伝えした「麋角解(さわしかのつのおつる)」が令和4年最後の七十二候となります。
新年は、1月1日に冬至の末候「雪下出麦(ゆきわりてむぎのびる)」と移っていきます。

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