秋分|雷乃収声|かみなりすなわちこえをおさむ|2023年

歳時記

秋分




未だ残暑が残る日が続いていますが、空を見上げると入道雲とともに秋の雲も一緒に現れ、朝晩幾分涼しさが感じられ、沖縄でも日差しが心なしか和らいできたようにも感じられます。暦も23日より二十四節気は「秋分(しゅうぶん)」、七十二候は「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」と移っていきます。また20日より「秋彼岸」に入ります。



秋分(しゅうぶん)



秋分




太陽が真東から昇り、真西に沈む。昼夜の時間がほぼ同じとなり、この日を境に日の出が遅く、日の入りが早くなり、「秋の夜長」へとなっていきます。
またこの日は「彼岸の中日」でもあり、「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り秋の気配を徐々に感じ、爽やかな日を迎えるのはもうすぐです。



鱗雲 鰯雲 鯖雲




そんな時ふと空を見上げると「鱗雲(うろこぐも)」。
この雲を見ると思わず「秋だなぁ」と口をついてしまいます。
さてこの鱗雲、秋になると空気が乾燥してきて高度の高い上層に雲が出来るため「天高く」の言葉通り秋の空は高く感じられるのでしょう。
その中で真っ白な鱗雲は正式には「巻積雲絹積雲)」と言うのですが、いわし、さば、さんまが獲れる時期と重なっているとともに、鰯の大軍を想起させるため「いわし雲」と呼ばれたり、さばの背中の斑点に似ていることから「さば雲」とも呼ばれたりしています。
もう一つ鱗雲によく似ているのですが、もう少しひとつひとつの塊が大きく、少し灰色がかって太陽を遮るような中層に出来る雲に「ひつじ雲」があります。



ひつじ雲




どちらも低気圧や台風が遠くに存在す時に出現する雲ですが、鱗雲は二日後くらい、ひつじ雲は翌日あたりに雨が降ることが多いようです。
時折空の雲を見上げてお天気の予測でもしてはいかがでしょうか。
こんな楽しみも「観天望気」のひとつです。



雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)



雷乃収声 かみなりすなわちこえをおさむ




本格的な秋の到来を少しずつ感じさせてくれるこの頃は、春分の頃から夏の間鳴り響いた雷もそろそろ鳴りを潜めて鳴らなくなる頃となります。
春分の末侯の「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」と対をなす七十二候です。



昔の人たちは「稲妻」が稲を育て、実らせると考えていました。
その考えも単なる思い込みではなく科学的にも空気中の酸素や窒素を雷が化学変化を起こし「窒素酸化物」として雨となって地上に降ってきます
窒素酸化物は窒素系肥料と同じもので、天然の肥料と言われています。



彼岸(ひがん)



20日より暦は、土用、節分や八十八夜などと同じ雑節のひとつ「彼岸」です。
そもそもお彼岸は春と秋の二回あります。
彼岸は、秋は秋分の日、春は春分の日をはさんで前後3日の7日間を言い、お彼岸の初日を「彼岸の入り」最終日を「彼岸の明け」と言います。そしてその真ん中の日が「秋分の日」・「春分の日」に当たり「彼岸の中日」と呼びます。
彼岸については、風物詩の記事でお伝えしておりますのでご参照ください。



さて、お彼岸、お盆、命日などにはお墓参りに行くことも多いと思います。
そこで気持ちよくお参りできる作法とポイントについてご紹介します。
ただ、絶対にこうしなければならないというわけではなく、ごく一般的な方法を書いておきます。
家風、地域ならではの方法や宗教的なしきたりがある場合は、そちらに従うのがよいと思います。



お彼岸にお墓参りをする理由は?



お彼岸の中日(春分の日、秋分の日)には、太陽は真東から昇って真西に沈みます。そのため、西にあるとされるあの世(彼岸)と、東にあるとされるこの世(此岸:しがん)が通じやすいと考えられ、お墓参りをして先祖を供養するようになりました。



また、お彼岸に先祖の霊を供養することには、こんな深い意味があります。



あの世(彼岸)にいったご先祖様は、「人は何故生きるのか」「死んだらどうなるのか」という大命題の答えを知っている、つまり「悟り」を開いた状態にあります。
一方、私達の生きているこの世(此岸)では、迷いや悩みや煩悩に惑わされ続けています。
この此岸にいる人間が悟りの境地である彼岸に近づく方法のひとつとして、お墓参りや読経があるのだと言われています。



お墓参りの作法



「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、この頃は気候もよくなり、お墓参りに出かけるにはいい季節です。家族揃って仲良くお参りできるように、お墓参りのポイントを押さえておきましょう。



墓参り




お参りの準備



手桶や柄杓はお寺や霊園で貸してもらえることが多いようですが、掃除のための、雑巾やたわし、ゴミ袋などはつい忘れがちです。
お供え用の花や菓子、飲み物などと、それらをのせる半紙、お参りのための数珠や線香(お寺や霊園にて準備してあるところもあります)も用意します。
さらに線香に火をつけるためのろうそくやマッチも忘れずに。
服装は葬式などの法事とは違うので、普段着でかまいません



まずは挨拶とご本尊にお参り



お寺や霊園についたら、お寺の住職や霊園の管理事務所に挨拶をします。
お寺の場合には、本堂に向かって会釈や合掌をして、お寺の御本尊様にもお参りをします。
挨拶とお参りがすんだら、外箒(そとぼうき)を借りたり、手桶に水をくんだりして、お墓にむかいます。



手桶




お墓を清める



お墓についたら、墓地内の雑草や落ち葉を取り除き、墓石に水をかけてホコリを落とします。コケなどはたわしで洗って落とし、花立てや香炉もきれいに掃除し、水鉢もたわしで磨きます。



墓を清める




お参りの仕方



①花立てに花を飾り、お供え物は二つ折りの半紙の上にのせます。
②束のまま火をつけた線香をあげます。炎は、口で吹き消さず、手であおいで消します。
③故人に縁の深い人から順に、線香の火を消さないように注意して手桶の水をかけます。
④数珠を持って、ひとりずつ手を合わせて拝みます。その際、ご先祖様に日頃の感謝の気持ちを伝えたいものです。



線香




後始末もきちんと



線香は燃やしきるようにし、花以外の供物は持ち帰ります
最近では「フードロス」などの意識も高くなっていますので、供え物は持ち帰った後、ありがたく頂くのも供養の内とも言われています。
そして借りた道具は元へ戻し、ゴミは集積所に持っていきます。もし集積所がない場合はごみも持ち帰ります。



帰宅後は、自宅に仏壇がある場合は、仏壇もきれいに掃除をして、花やお水をあげます。
おはぎ(春はぼたもち)や季節の果物などをお供えし、お線香を上げて供養します。



アロハと六波羅蜜



さて、話は換わりますが、アロハというハワイの挨拶の言葉をご存じの方は多いと思います。
ハワイの言葉「アロハ(ALOHA)」は、こんにちは、さようなら、ありがとうの挨拶や愛情をあらわす場面まで、幅広い意味で使われますが、以下の言葉の頭文字をとっているそうです。ALOHAの中に大事なエッセンスがこめられているのだそうです。
なんだか六波羅密といわれる六つの善行に似ているように思えてなりません。



アロハ ハワイ




Akahai=思いやり
Lokahi=調和
Olu olu=喜び
Ha’a Ha’a=謙虚
Ahonui=忍耐



ハワイではご先祖様はアウマクアと呼ばれ、家族を代々守るサメやかめ、ヤモリなどに化身して身近にいるとされています。
また、太陽の動きと、此岸と彼岸も密接なようで大事なイベントの前には、日の出の見える東のスポットにお祈りにいったり、西の岬に死者に会えるというスポットがあったりもします。
古代からの日本のマインドとハワイ文化にはアロハと六波羅蜜の共通する部分などがあり、面白いです。



彼岸花



皆さんがお墓参りする時にはお花(供花)もあげますね。
このお花、秋は彼岸花の季節ですが、この彼岸花は供花としては忌み嫌われるようです。
毒のある花、トゲのある花は仏教ではお供えする花としては相応しくないと言われているからです。



ただ、墓場にヒガンバナが多いのは、土葬時代、異臭や有毒性を利用して遺体を動物から守るためだとも言われています。
ヒガンバナの有毒性や悪臭を利用して、モグラやネズミなどから田んぼのあぜ道を守る目的で植えたことと同じ理屈のようです。



彼岸花 曼殊沙華




その「彼岸花」、全草有毒な多年生の球根植物で、球根に毒があり、経口摂取すると吐き気や下痢を起こし、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死に至ることもあります。
イネ、麦類など一般の作物が凶作のとき、代用として食するために栽培する作物のことを「救荒作物」といい、通常は食用にしないが飢饉(ききん)の際食用にする野生の植物を指します。有毒植物である彼岸花も球根をすりつぶし、充分に水でさらして毒抜きをしてそのデンプンを食用にしたこともあったそうです。
一般の方々は危険ですので、試してみるようなことはくれぐれもなさらないようにしてください。



さて、なぜ彼岸花と言われるかというと秋の彼岸頃から開花することに由来するというのが定説となっていますが、これを食べた後は「彼岸(死)」しかない、というものもあるようです。



また他の呼び名としての「曼珠沙華(まんじゅしゃげ・まんじゅしゃか)」は、『法華経』の中の一説に由来するようです。
その花は伝説の天界の花で、彼岸花と色も形も違うのすが、「マンジュシャカ」には赤いという意味もあるので中国に伝来した際に充てられたものではないかという説もあります。



結詞



祝日の秋分の日は前年の2月1日に国立天文台が官報で発表する「秋分日」を基準にして決められますが、「祖先を敬い、亡くなった方々を偲ぶ日」と祝日を定めた法律に書かれているようにこの一週間くらいは敬虔な気持ちで先祖の墓前で手を合わせるのも大切なことと思います。



蟄虫坏戸 むしかくれてとをふさぐ




秋分の日を境に日照時間が短くなり、徐々に秋らしく、そして「暑さ寒さも彼岸まで」言葉通りに涼しくなっていくと思われますが、七十二候は28日より秋分の次候「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」と入っていきます。

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