シニアの足元

アクティブシニア





一定の年齢を超えると、体のあちこちが悲鳴を上げ始めます。中でも、膝を気にする方は多いようです。
通院して本格的な治療をしている方だけでなく、「歩くとなんとなく違和感がある」程度の方、膝以外にも「ちょっと歩くだけで、足が疲れやすくて困る」という方も、外出時の靴にはいろいろ気を遣っておられます。



一方で、夏に5センチヒールのサンダルを履きこなすシニア女性も、場所によってはちらほら見かけるようになりました。
ずいぶん前に、海外でシニア女性が街を歩く姿を見て気付いた日本との違いが、まさにこのヒール付きサンダルという点でした。
それが時を経て、日本でも段々と一般化しつつあります。
こよなくハイヒールを愛する60代半ばのおしゃれシニア女性によると、「おしゃれして出かけたい、かつ、歩く時間も距離もあまり多くない時にはヒールだけど、旅行にはスニーカーを履いて出かけます」と言われます。
このようにシニアの足元の装いは、多様化し、出かけ先や条件でいろいろ使い分けているようです。



いつもふれる話ですが、シニア層の女性は履きやすさだけを最重要視しているといった思い込みはお客様のニーズとの掛け違いのもとです。
シニアと呼ばれる年齢層の方々は、膝を気にするし、機能性を重視するけれど、ライフスタイルや健康状態や好きなテイストによっては自らを表現する方法としてデザイン性優先のおしゃれ哲学も考慮しているということです。



おしゃれはあきらめたくない!というモヤモヤ



おしゃれなヒールのサンダルを履きこなす、おしゃれシニアが増えてきた、という華やかな光の陰には、「本当は私だっておしゃれなシューズがいいけど、無理して転ぶのは怖い」という本音があります。



そういう方向けに、多くのメーカーから出ているのがコンフォートシューズ(詳細は後述)です。
すでにひとつのカテゴリーとして確立されていて、同じコンフォートシューズと呼ばれる靴の中でも、かなり見た目のおしゃれ感強めのものから、履き心地優先のものまでバリエーションも幅広く、進化のスピードも加速しているように感じます。



特に女性の場合、若い頃には、おしゃれのために無理してでもハイヒールを履くこともあったかもしれませんが、シニア世代になると、そういう無理はしません。
自分がもっと心地良く過ごせることを優先しています。
ただし、これは体の変化の側面で、心(本音)はもう少し複雑だと思います。



例えば、服で頑張っておしゃれしても、足元がいかにも機能性最優先の靴だと、妥協に妥協を重ねた納得、という感覚ではないでしょうか。
本当はもっとおしゃれな靴を合わせたい」というストレスを解決してくれる魔法のような靴があるならば頼りたいというのが本音なのです。



旅先でのファッションが靴選びに大きく影響?



シニア世代は、ちょっとした日帰り旅行から、国内旅行であれば温泉旅館でのんびり過ごす旅、はたまた観光地をめぐる旅、海外旅行であれば数か国をめぐる周遊ツアーのように歩き回る距離も相当な旅もあります。
そう、ひと口に旅行と言っても、目的や行き先によってふさわしいファッションも大きく異なるわけです、そうなると、周辺アイテムも影響を受けます。
特に足元、つまり靴は身に付ける服によって合う合わないがはっきりしてしまうアイテムです。



このことは、同じ「旅行好き」な方に絞って考えた場合でも、実は必要な靴のバリエーションの幅が広いということです。
「旅行好き」な方にはこういう靴が良いだろう、というざっくりした方向性の定め方ではお客様の本音とすれ違いの元となってしまいます。
より具体的なイメージをもって想定しないことには、旅行のための靴を探すシニア女性と売り手側の思いはマッチしない事態に陥ります。
このような状態ですと、買い手側には決して積極的かつ強力な消費行動は起きません
中には、TPOに拘るおしゃれな方は、海外旅行にタイプの違う靴を別に持って行かれる方もいらっしゃいますので、売り手側は、いかに対象となるお客様の詳細な実態把握が大事になってきます。
より雑談や旅行談議に花を咲かせ、お客様のニーズ(本音)にいかに的確に迫れるかがポイントとなります。



ファッションのカジュアル傾向がもたらしたもの



ここ数年は特に、全世代に共通して言える傾向ですが、服も靴もバッグも、カジュアル化がひとつのファッショントレンドとなっています。
かつて「カジュアル系」と聞くと、あまりお金をかけない若者ファッションを思い浮かべる方も多かったはずです。
ところが今や、特に若い世代では、昔の「気合いを入れたドレスアップスタイル」は格好悪いと受けとめられ、こなれたドレスダウンが良しとされる傾向が続いています。
特に足元のおしゃれの変化は顕著です。
スニーカーのバリエーションが広がり、スポーティーなデザインとは異なるおしゃれ系スニーカーも増えてきました。



それが次第に40代、50代と広がり、シニア層にまで影響しつつあります。
現代の感覚ではシニア層の間でも、「カジュアルファッションは手抜きではなく、自分たちも楽しめるスタイルだ」と認識されています。
それこそ、団塊の世代の方々は若い頃にジーンズ第1世代であることも影響しているかもしれません。



スニーカー売り場で、シニアの方々の姿を見かけるのは珍しい光景ではなくなってきています。
いわゆる「よそ行きスタイル」であるドレスアップスタイルとは違うおしゃれを、長い期間を経て体得し、年齢を重ねても足元にもカジュアル感を上手に取り入れているようです。



趣味や行動のパターンと靴の選び方



趣味や行動のパターンと靴の選び方



外出はほとんど近所だけ、という場合、特に夏場はぞうりタイプのサンダルのようなもので済ます方もいらっしゃいます。
それはそこまで気を遣わなくても良い行動エリアだからです。



一方、定期的に趣味の集まりに出向くような方は、当然それなりに意識した足元になります。
人から見られた自分というのを、どれだけ意識する生活なのかも靴選びの重要な要素となります。



また、移動は自転車または徒歩という場合、電車やバス等の公共交通機関を利用する場合や自ら車を運転する場合等々も靴選びの重要な要素のになります。



歩く距離が長いほどほど、靴に機能性を求めるウェイトは高くなりますし、車を運転する時間が長い場合は運転に差支えのない靴(ハイヒールや下駄・サンダルなどではない)であることが大切です。
それに、膝や足の健康状態が掛け算的に条件として加わって、それぞれにふさわしい靴が割り出されています。
このような流れは、、売り方の仕掛けを考える際には不可欠な視点です。



コンフォートシューズとは?



先ほど触れました「コンフォートシューズ」とは、足の健康や履き心地を重視して作られた靴のことを指しています。
形については特に決まった定義がなく、シューズ・パンプス・スニーカーなどさまざまな形状の靴がコンフォートシューズには含まれます。



またコンフォートシューズの多くは履き口に柔らかい素材を採用しており、靴ずれしにくいのも特徴です。
さらには、つま先を圧迫しないよう配慮された靴も多くあります。



立ち仕事や外回りが多い方には、インソールに衝撃を緩和する素材を使ったものや、通気性に優れたものもあり、最近ではおしゃれなコンフォートシューズも増えていて、幅広い年代の女性から支持されています。



コンフォートシューズの選び方



タイプで選ぶ



シューズタイプ






シューズタイプは通勤・旅行などで活躍する定番の形で、コンフォートシューズを普段から使いたい方におすすめです。
くるぶし下まで足全体を覆うため安定感があります。
また、このタイプはデザインが豊富なのもシューズタイプであることも特徴です。
さまざまな素材を使った靴がラインナップされており、ファッショナブルに履きこなすことも可能です。
甲高・幅広サイズに対応した製品も展開されているので、足にしっかりとフィットしてくれます。



パンプスタイプ






ビジネス・フォーマルシーンなどで活躍するタイプのコンフォートシューズです。
ジーンズなどのカジュアルな服装と合わせれば、きれいめ要素もプラスできるアイテムともなります。



パンプスタイプを選ぶ際は、かかと部分に隙間がなく、潰れにくい・履き口がきつすぎない・つま先に0.5~1cm程度の余裕があるもので脱げにくいものを選ぶといいしょう。
実際に試着してみて、足先が自由に動くか、つま先に爪が当たっていないかは必ずチェックしましょう。



スニーカータイプ






足の甲まで覆うスニーカータイプは安定感があるのが特徴です。
さらに軽い素材を使っているモノなら、ランニングなどの運動にもおすすめできます。
カジュアルなファッションはもちろん、きれいなファッションと合わせてもおしゃれに履きこなせるはずです。



スリッポンタイプ






スニーカータイプと似たモノにスリッポンがあります。
スリッポンタイプはすっきりとしたデザインが魅力です。
しかし、歩きやすさ重視の方は、ヒモ・ベルトなどで固定できるスニーカータイプの方がおすすめです。



ヒールの高さで選ぶ



コンフォートシューズのなかには、ヒールが高くても安定感のあるモノが多くラインナップされています。
どうしてもヒールで足が痛くなってしまう方には、高さ3cm以内のモノがおすすめです。
3cm以内のモノならつま先に負担がかかりにくく、ヒールがあるのでより足をきれいに見せられます。
さらにはヒールに不慣れな方は、より安定感のある太めのヒールを選ぶとよいでしょう。



足のサイズに合わせて幅をチェック







コンフォートシューズを選ぶ際は、靴のサイズだけでなく足の幅も必ずチェックしましょう。
足の幅は「足囲」「ワイズ」とも呼ばれ、足親指と小指の付け根にある骨の出っ張り部分を一周した寸法です。Eを基準として寸法が大きくなるとEEや3Eと表されます。
また、足の幅・サイズが左右で異なるケースも珍しくありません。
靴を選ぶ際は、大きい方の幅・サイズに合わせて選び余る部分は中敷きなどを使って調節するとよいでしょう。



まとめ



今回取り上げたシニアと靴との関係については、それ以下の世代とは異なる事情が見え隠れしています。
日頃、誰と、どのような過ごし方をするのか、日常的な移動手段は主に何なのか、どういうテイストの服を着ることが多いか、など個々人のさまざまな条件によって大きく変わります。
また、サイズや形状は、疲労や苦痛に直結しますので慎重に選択し、なお且つ、デザインは諦めや妥協にならないように選んで差し上げたいものです。



次回は、シニアと健康について考えてみようと思います。

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